国内における商品の販売やサービスの提供などの商取引には、原則的に消費税が課税されます。
しかし、土地の譲渡や預貯金の利子、介護保険サービスなど、消費税のかからない取引も一部には存在します。
これらの消費税が課税されない取引のことを『非課税取引』といいます。
このほか、消費税が課税される要件を満たしていない『不課税取引』や、消費税が免除される『免税取引』もあります。
それぞれの取引の違いと、税務会計上の注意点について説明します。
国内の取引でも意外に多い非課税取引
1989年に初めて導入された消費税は、“国内において事業者が事業として対価を得て行う、資産の譲渡等”に関して、広く公平に負担を求める税金です。
商品の販売やサービスの提供以外にも、物の運送や広告など多くの商取引に課税されています。
その一方で、“国内において事業者が事業として対価を得て行う、資産の譲渡等”であっても、消費税の性質や社会政策的な配慮から、消費税の課税されない『非課税取引』が存在します。
主な非課税取引には、以下のようなものがあります。
1.土地の譲渡および貸付け
2.国債や株券などの有価証券等の譲渡
3.銀行券、政府紙幣、小額紙幣など支払い手段の譲渡
4.預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供等
5.郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡および地方公共団体などが行う証紙の譲渡
6.商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
7.国等が行う一定の事務にかかる役務の提供
8.外国為替業務にかかる役務の提供
9.社会保険医療の給付等
10.介護保険サービスの提供等
11.社会福祉事業等によるサービスの提供等
12.医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供等
13.火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
14.一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け等
15.入学金や授業料など学校教育にかかる費用
16.教科用図書の譲渡
17.住宅の貸付け
これらの取引には原則的に消費税が課税されませんが、条件によっては課税されるケースもあるので注意が必要です。
たとえば、『土地の譲渡および貸付け』に関して、1カ月未満の土地の貸付けや、駐車場などの施設の利用などで土地を使用する場合は、消費税が課税されます。
また、『社会保険医療の給付等』は非課税取引ですが、社会保険医療の対象とならない美容整形や市販されている医薬品を購入した場合などは、消費税が課税されます。
寄付や贈与が該当する不課税取引
非課税取引以外に、消費税が課税される要件を満たしていない『不課税取引』と消費税が免除される『免税取引』があります。
各取引は、税務会計の取り扱いがそれぞれ異なります。
前述した通り、消費税はあくまで国内での取引に発生するものであるため、日本ではない国外での取引は、課税対象になりません。
また、対価を得ることにならない寄付や贈与、資産の譲渡などは不課税取引となります。
不課税取引は、税務会計における課税売上割合の計算が非課税取引とは異なります。
課税売上割合とは、事業者における消費税の納税額を計算するために必要な割合のことで、売上全体のうち、消費税が課税される売上高の割合を示します。
課税売上割合の計算式は、以下の通りです。
課税売上割合=(課税売上高+免税売上高)/(課税売上高+非課税売上高+免税売上高)
非課税取引は課税売上割合の分母に算入されますが、不課税取引は分母にも分子にも算入されることはありません。
国外取引の多くが該当する免税取引
『免税取引』は、いわゆる輸出取引や、外国の事業者へのサービスの提供、外国人を中心とした国内非居住者への商品の販売やサービスの提供などが該当します。
免税取引の適用を受けるには、輸出許可書や、一定の事項が記載された契約書など輸出取引の証明になるものが必要です。
また、よく国際空港などにある免税店は、免税取引を行うための許可を得た店舗のことです。
免税取引も消費税を課税しないという部分は非課税取引や不課税取引と同じですが、課税仕入についての取り扱いが異なります。
課税仕入とは、事業者が事業のために購入した商品やサービスに対する支出のうち、課税売上から消費税の控除を受けられる仕入れのことです。
非課税取引のために行った課税仕入れについては、原則としてその仕入れにかかわる消費税額を控除することはできませんが、免税取引に関しては、その取引のために行った課税仕入れについて、原則として仕入れにかかわる消費税額を控除することができます。
このように各取引で、税務会計上の取り扱いが異なります。
それぞれの取引の内容をよく理解して、スムーズな税務会計を行いましょう。
※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。