ひと昔前までは、飲食店の集客といえば、情報誌やテレビ番組、飲食店検索サイト、チラシを利用することが一般的でしたが、最近ではYouTuber(ユーチューバー)にお店の紹介動画を投稿してもらう飲食店も増えました。
これは、影響力のある発信者に商品やサービスを紹介してもらう『インフルエンサー・マーケティング』の一つで、店側はYouTuberの影響力を利用する一方、YouTuberは店にネタを提供してもらうという、Win-Winの取引であるともいえます。
今回は、飲食店がYouTuberを店に呼ぶメリットや、依頼方法、費用などについて紹介します。
インフルエンサー・マーケティングは成長中
インフルエンサーとは、世間に対して影響力をもつ人のことを指します。
芸能人などもそうですが、最近では、チャンネル登録者数の多いYouTuberや、フォロワー数の多いインスタグラマー、ブロガーなどが、インフルエンサーと呼ばれています。
こうした、ネット上で影響力をもつ人材に協力してもらい、商品やサービスのファンを獲得していくことを、インフルエンサー・マーケティングといいます。
インフルエンサー・マーケティングには、いわゆる店舗発信の“広告・宣伝”とは異なり、消費者の目線で、正直な感想を発信してもらえるという利点があります。
ユーザーからの信頼を得やすく、来店効果も期待できるでしょう。
一般的に、YouTubeのチャンネル登録者(フォロワー数)が10万~100万人以上の発信者は『トップ(メガ)インフルエンサー』と呼ばれ、絶大な影響力を持っています。
また、チャンネル登録者数が1万~10万人のインフルエンサーは『マイクロインフルエンサー』と呼ばれ、釣りや料理、田舎暮らし、ハンドメイドなど、特定の分野を得意とする投稿が多いとされています。
一定層のファンをもつので、そのクラスターに宣伝をしたい際に適しています。
このほか、チャンネル登録者数が1万人以下の『ナノインフルエンサー』も、大いに影響力がある存在です。
友達感覚でチャンネル登録をしているユーザーが多いため、投稿に対する反応率が高くなり、特定の地域で発信している場合、その地域のユーザーが足を運んでくれる可能性があります。
YouTuberの個性はさまざまですから、人選においては、店の雰囲気や提供しているメニュー、キャンペーンなどと相性がよいYouTuberを見つけましょう。
それぞれの得意分野や、店との親和性、ターゲット層への訴求力(チャンネル登録者数)の見極めも重要です。
ラーメン店なら、ラーメン好きYouTuberや、街歩き・食レポチャンネルで活躍するYouTuberなど、焼肉なら、ガテン系チャンネルのYouTuberや大食いYouTuberなど、わかりやすく効果を狙える配信者を探してもよいでしょう。
YouTuberとコンタクトをとるには?
YouTuberとコンタクトをとるには、主に2つの方法があります。
●第三者を介せず、直接その人や所属事務所へ連絡をする
●YouTuberのキャスティング代行会社に依頼する
前者は、スケジュール管理の手間が必要となることや、万が一そのYouTuberにお願いした投稿動画が炎上した場合に当方の負担が大きくなるというデメリットがありますが、費用を安く抑えられます。
一方、後者は、コストは割高になりますが、PRにふさわしいYouTuberを探すところから請け負ってくれるため、さまざまなサポートを受けやすいという特徴があります。
誰に来てもらうかが決まったら、条件交渉に入ります。
後のトラブルを防ぐためにも、納期や報酬、支払日などの細かい契約を締結しましょう。
報酬額は、クリエイターによって数万~数100万円と幅広く変動しますが、相場観としては、1再生あたり3~20円といわれています。
有名なクリエイターなら、1万回再生で20万円、最低価格で3万円程になることが多いようです。
準備が整えば、実際に店に来てもらい体験・試食するなどした動画を制作してもらい、試聴の段階で問題がなければYouTubeでの公開となります。
公開後は、動画の視聴パフォーマンスを詳しく分析できるアナリティクスデータを取得することができるので、忘れずにチェックしましょう。
YouTuberに宣伝してもらうメリット
もちろん、YouTuberに頼らず店舗側が自ら動画を制作し、投稿・宣伝することもできますが、YouTuberに宣伝してもらうことにはさまざまなメリットがあります。
たとえば、日頃から見る人を楽しませる視点をもつYouTuberなら、動画の企画・編集についてのアイデアが豊富なため、依頼する飲食店側にノウハウがなくても、魅力的な動画を作ってもらうことが可能です。
また、数10万人以上のチャンネル登録者をもつYouTuberあれば、直接的な拡散力はもちろん、ネット上で話題になったり、後々に過去のアーカイブが視聴されたりする可能性も高く、二次的な拡散効果も見込めます。
メリットが大きい一方、注意点もあります。
一つは『ステマ(ステルスマーケティング)』を疑われて炎上するリスクです。
依頼した動画が、一見して依頼案件であることがわからない場合、ファンを騙す行為のように受け取られ、店舗・配信者の双方が信用を失います。
また、店舗側がYouTuberに、動画内容について「こうしてほしい」と強く求めることも避けたほうが賢明です。
伝えたいポイントが多くあるとしても、そのYouTuberの持ち味を活かした動画でないと、効果が薄くなります。
PRしてほしい内容を伝えたら、あとは信頼して任せるほうが成功しやすいでしょう。
インフルエンサー・マーケティングは発展中の分野なので、YouTuberによっては柔軟に対応してくれる可能性もあります。
気になるYouTuberがいれば、事務所や本人にコンタクトをとってみてもよいでしょう。
※本記事の記載内容は、2021年7月現在の法令・情報等に基づいています。