シルバー人材センターの存在は知っていても、その活動内容を知っているという方は少ないのではないでしょうか。
シルバー人材センターでは、臨時・短期・軽易で安全な高齢者向けの仕事を、会員となった人に紹介しています。
また、公的な仕事だけではなく、民間の仕事も請け負っており、企業がセンターに仕事を依頼することもできます。
今回は、働きたい高齢者と人手を求める企業を結ぶ、シルバー人材センターを活用する方法について説明します。
シルバー人材センターの歴史と依頼できる仕事
シルバー人材センターは、都道府県知事の指定を受けて各市町村に設置された公益法人です。
運営は、『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律』に基づいて各シルバー人材センターが独自に行っており、高年齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに、地域社会の活性化に貢献することを目的に、臨時的または短期的な業務を提供しています。
高齢者は年会費を支払い、シルバー人材センターの会員となることで、企業や個人が発注した仕事をセンター経由で受注し、収入を得るという仕組みです。
そもそもシルバー人材センターは、1974年に東京都が創設した『高齢者事業団事業』が始まりでした。
高齢者の社会参加のために始まった高齢者事業団の事業は、その後、全国に拡大していきます。
現在、70万人以上の高齢者が、シルバー人材センターに会員として登録しています。
会員になれるのはどのセンターも概ね60歳以上の高齢者で、発注できる仕事も、『臨時的かつ短期的またはその他の軽易な業務』に限られます。
ただし、軽易な業務といっても、マンションの清掃管理やハウスクリーニングなどは依頼できますし、植木の剪定や衣類のリフォーム、刃物研ぎなどの職人が行うような仕事を依頼することもできます。
専門性の高い仕事は、各センターが業務の経験を持つ会員に発注するので、安心して任せることができるのです。
ほかにも、翻訳や通訳、経理事務、店番に自動車の運転、家具修理に内装工事まで、依頼できる仕事内容は多岐にわたります。
一方で、高齢者の就業になるため、危険・有害な作業を内容とする仕事などは発注することができません。
また、基本的には請負または委任という形でしか発注できず、ほかの社員と同じオフィスで就業させたり、発注者の指揮命令下で就業させたりすることもできません。
会員は、『臨時的かつ短期的な就業』が条件なので、一人の会員が長期にわたって同じ仕事を続けることはできません。
ただし、特別な知識、技能を必要とする仕事(介護など)については、継続的に就業することもできます。
仕事を依頼する流れはとてもシンプル
企業としてシルバー人材センターで人材を探したい場合は、まず仕事を依頼したい市区町村のセンターに申し込みます。
各センターの連絡先は、全国シルバー人材センター事業協会のHP内にある『あなたのまちのシルバー人材センター』に掲載されているので、希望のセンターを検索して探しましょう。
場所によっては無料でお試し発注を行っているところもあり、会員の就業を試せることもあります。
申し込みが済んだら、センターと契約を結び、業務の発注は完了です。
その後、センターが業務に適した会員に仕事を割り振り、業務がスタートします。
業務が無事に終了したら、企業側は発注した仕事の代金をセンターに支払います。
金額は仕事の内容やセンターによって異なりますが、基本的にシルバー人材センターは収益を目的としていないため、通常の人材派遣会社などよりも比較的低い予算で発注できる可能性があります。
たとえば東京都豊島区のシルバー人材センターでは、会社内の清掃や各種一般事務が1時間1,094円~、植木の剪定が事務費込みで1日1万2,323円~、塗装作業が1日1万1,203円~、という設定になっています。
各センターによって異なりますが、代金には仕事を遂行した会員に支払われる配分金のほか、事務手数料や交通費、材料費などが含まれることもあります。
現在、シルバー人材センターは全国に1,200以上あり、働く意欲のある多くの高齢者が登録しています。
高齢者の多彩な技能や知識、そして経験を活かすという意味でも、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。