自治体と民間企業が連携して公共サービスを提供することを、『公民連携(PPP)』といいます。
その代表的な手法の一つが、『PFI(Private Finance Initiative)』です。
PFIとは、従来は自治体が行ってきた公共施設等の設計、建設、維持管理・運営から公共サービスの提供までを、自治体と連携して、民間企業が行うことをいいます。
今回は、公民連携事業の事例をあげながら、その概要を説明します。
企業のアイデアやノウハウが生きるPFI
公民連携は、英語で公共と民間のパートナーシップを表す、『PPP(Public Private Partnership)』の略です。
PPPの手法には、『包括的管理委託』(複数の業務や施設を包括的に発注し、運営方法などは企業のアイデアやノウハウに任せる)や、『指定管理者制度』(公共施設の管理を委任する)、『民間公営』(企業が設計や建設などを行い、自治体などが運営する)といった、さまざまな手法があります。
なかでもよく行われているのが、民間企業が自ら資金を調達し、建設・整備した公共施設の運営を受託する方式の『PFI(Private Finance Initiative)』です。
PFI事業の一例として、2020年に竣工した、福岡県行橋市の『行橋市図書館等複合施設整備事業』があります。
これは、地域の人々が交流したり情報を発信したりできるよう、図書館を含めた複合施設を整備するという事業で、施設の所有権は行橋市が所有しながら、事業者は施設の建設後、維持管理や運営業務を行い、投下した資本を回収するというスキームになっています。
また、千葉県佐倉市の『市立小中学校・幼稚園空調設備整備事業』では、市立の小・中学校、幼稚園の普通教室など683室に、空調設備が整備されました。
この事業では、市内の事業者を対象に公募が行われました。
空調の設置後は、事業者が特別目的会社を設立、維持管理業務などを請け負いました。
これらのほかにも、公営住宅の整備事業や空港施設の運営事業、庁舎の整備・運営事業など、自治体の多くが、PFIの手法を取り入れて整備事業を進めています。
PFIのメリットと課題
行政側のメリットとしては、民間の資金を利用することで、一時の大きな支出が避けられることや、企業のノウハウを利用して、質の高いサービスを住民に提供できる点があげられます。
一方、事業者側のメリットとしては、従来は自治体が担ってきた『まちづくり』や『文化の継承』など、公共性の高い事業に携わることができる点があげられます。
公民連携では行政との折衝が必要となり、また、地域で暮らす人々の要望に答えながら進めていく事業になります。
しかし、地域全体に喜ばれる事業ができることは、大きなメリットといえるでしょう。
そして、もちろん課題もあります。
特に事業者は、設備投資などに多額の資金を投入せねばならず、事業者の規模によっては経営を圧迫するおそれも生じます。
また、地域住民の意見を聞きながら事業を進めていくことになるため、想定していたよりも費用がかかってしまったり、完成が遅れて投下資本の回収が遅くなってしまったりするリスクもあります。
こうしたリスクを軽減するため、事業から生み出されるキャッシュフローを返済原資とする『プロジェクトファイナンス』を利用して、資金調達をする事業者も存在しており、これからも選択肢は広がっていくものと予想できます。
PFI事業の事例は、内閣府や自治体なども公表しています。
参画を検討している事業者は、参考にしてみるとよいでしょう。
※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。