中高年社員のセカンドキャリア開発に取り組んでいる企業が増えています。
『早期退職優遇制度』などに代表される『転進支援制度』を導入し、本格的にセカンドキャリアの形成を後押ししている企業も少なくありません。
しかし、転進支援制度は従業員からリストラのための施策と認識されやすく、事業者と労働者との間に誤解が生じやすい制度でもあります。
中高年社員に納得してもらい、転職支援制度を導入するためのポイントを紹介します。
早期退職優遇制度と希望退職者募集制度
転進支援制度は、従業員の思い描くライフプランを実現させるため、その転職や独立を支援する制度であるとともに、企業にとっては遠回しなリストラ勧奨制度にもなり得ます。
企業側が意図する、しないに関わらず、中高年社員を退職や転職に導くものであるため、導入の際には従業員の反発を招くこともあります。
しかし、コロナ禍で働き方が大きく変革しつつある今、中高年社員のセカンドキャリア構築に注力することは、企業の務めでもあります。
転進支援制度をスムーズに導入するためには、従業員に制度のメリットを理解し、納得してもらうことが何よりも大切です。
転進支援制度の代表格として、早期退職優遇制度があります。
早期退職優遇制度は、早期退職者に対して退職金の割増や準備休暇を付与するなどの優遇措置を与える、いわば福利厚生としての意味合いがあります。
基本的には従業員が自らの意思で退職するため、自己都合退職となりますが、通常の自己都合退職と違い、優遇措置があるので、セカンドキャリアを考えている中高年社員にとっては、条件のよい退職方法の一つといえるでしょう。
この早期退職優遇制度を導入する際に周知したいのは、『希望退職者募集制度』とは異なる制度であるということです。
早期退職優遇制度はあくまで従業員のセカンドキャリア構築を目的としたもので、人員整理が目的ではありません。
一方で、希望退職者募集制度は、企業側が従業員に対して主体的な退職を募る制度のことで、リストラの意味合いが強く、退職理由も基本的には会社都合での退職となります。
また、希望退職者募集制度は一時的なものである場合が多いため、社員が利用したいタイミングに利用できるとは限りません。
早期退職優遇制度を導入する際は、リストラが主目的ではなく、従業員のセカンドキャリアを支援するためのものであることを強調しましょう。
また、会社の経営状態や時期とは無関係に利用できる制度であることを周知することも大切です。
会社にとって必要な人材の流出を防ぐには
各企業で取り入れられることが多くなってきた、転職のための研修やスキル形成を支援する『転職支援あっせん制度』や、店舗などで運営ノウハウを学ぶことができる『独立開業支援制度』なども、転進支援制度の一環ととらえることができます。
これらもリストラというよりは、中高年社員のセカンドキャリアを支援するという意味合いが強い制度です。
とはいえ、会社が中高年社員の早期退職を募る意図の背景には、企業が目指す姿へ近づくための組織再編や、“学歴や年齢ではないジョブ型雇用”や“若手の活躍の場を増やす”などのいわゆる『黒字リストラ』と呼ばれる意図が含まれている場合もあるでしょう。
そのようなときに会社と従業員、双方にとって前向きな施策となるのが、この転進支援制度なのです。
まずは、長期的な制度設計を行い、各種条件について細かく決めておく必要があります。
無条件で誰でも転進支援制度を利用できてしまうとなると、会社にとって必要な人材まで流出してしまうことになりかねません。
そのため、制度の利用条件を、会社の承諾制にしておくことが大切です。
条件のなかに、業務上必要な人員は除けるような『除外規定』を設けることもできるので、検討するとよいでしょう。
条件を詰めたら、従業員への説明の場をしっかりと設けて、条件や年齢の基準、除外規定などについても詳しく説明します。
理解を得られないまま導入した場合は、転進支援制度を誰も利用せず、制度が形骸化してしまう可能性もあるので注意が必要です。
会社にとってもプラスとなる制度を使って従業員のライフプランについて一緒に考え、どのような支援ができるかを検討しましょう。
※本記事の記載内容は、2021年9月現在の法令・情報等に基づいています。