利益を求めるだけではなく、社会にどのような意義があるのかを訴えていくブランディングモデル『パーパスブランディング』が、社会に浸透しつつあります。
『パーパス(Purpose)』とは日本語で『存在意義』を意味し、パーパスブランディングは、自社の存在意義を見つめ直し、どれだけ社会に貢献できるかという存在意義を主張することで、賛同や共感を呼び、利用や購入に結び付けようとするものです。
今回は、これからさらに、企業の成長には欠かせない要素の一つになっていくであろうパーパスブランディングについて説明します。
企業の社会における存在意義が問われる時代
昨今、自分の会社は何のために存在するのか、自分たちは何のために働くのかを明確にしていくパーパスブランディングに沿った企業行動が主流になりつつあります。
これまで、多くの企業は顧客の期待に応えるために、さまざまな営利活動を行ってきました。
資本主義社会において、お金を得るために働くというのは、誰も疑うことのない当たり前の概念です。
企業は、よりよい商品やサービスを生み出し、時にはブランド化することでその商品やサービスを売ってきました。
しかし、近年はそれだけでは物が売れなくなってきています。
必ずしもよい物が売れるとは限らず、企業の“パーパス”、つまり存在意義に共感できるかが重要視されるようになってきました。
その要因の一つは、ミレニアル世代の特性にあるといえます。
ミレニアル世代とは、1980年代から2000年初頭に生まれ、2000年以降に成人したり社会人になったりした世代のことをいいます。
これからの消費行動トレンドのカギを握っているといわれるミレニアル世代は、消費よりも社会的な貢献や自己の存在意義に関心があり、『競争』よりも『自分らしい生き方』を追求する傾向にあります。
情報過多の時代に生きているからこそ、逆説的にシンプルさや人間らしさを求めており、商品やサービスを購入する際も、そのものの良し悪しのほかに、その企業らしさや個性、存在意義を重要視するという傾向があります。
そうであれば、この世代から支持を受けるには、自社が社会のなかで果たしている役割を示すことが重要だと考えられます。
Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグは、2017年に自身が中退したハーバード大学の卒業式で、ミレニアル世代に向けて、「パーパスこそが、人々に何か大きなものとの繋がりを感じさせるものであり、その人の人生を豊かにし、幸福をつくる源泉である」と演説しました。
パーパスとは、これからの時代を生きる全人類に当てはまる概念であり、自分が何のために働くのか、何のために生きるのかを探るための方法論でもあるわけです。
パーパスブランディングの成功例
パーパスブランディングの方法としては、社会における存在意義を確立させたうえで、自社の活動に反映させ、購買者に認知・共感してもらうこととされています。
パーパスブランディングが成功している企業として名前があがるのが、ヘアケア製品やヘルスケア製品などでお馴染みの世界的生活用品メーカー・P&Gジャパンです。
P&Gは、『現在そして未来の、世界の消費者の生活を向上させる』というシンプルなパーパスを掲げ、その志を貫き通しています。
人々の生活を向上させることは、自社の生活用品を買ってもらうこととイコールでもあります。
つまり、その志はP&Gのビジネスにも深く関わるパーパスブランディングでもあるのです。
また、世界的IT企業のGoogleは、『世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること』を使命としています。
実際に、Googleはこのパーパスからブレることなく、さまざまなサービスを提供し続けています。
このように、志を持って活動していくことは、企業の今後の命題であるともいえるでしょう。
どんな企業でも、パーパスブランディングが当たり前になる時代が近づいてきているといえます。
顧客の方を向いてサービスするだけではなく、企業側の社会貢献や存在意義を明確にすることが、顧客からの支持につながっていくのです。
まずは、自社の事業が社会にどう貢献できるのか、どう役に立てられるのかを考えてみるところからはじめてみましょう。
※本記事の記載内容は、2021年1月現在の法令・情報等に基づいています。
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