B型肝炎訴訟という言葉を、テレビのニュースやCMで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
B型肝炎訴訟とは、幼少期の集団予防接種時に、注射針の使い回しなどによってB型肝炎ウイルスに感染してしまった人が、国に損害賠償を求める訴訟のことです。
訴状の作成や資料の収集などを弁護士に依頼するケースもありますが、手続きは定型化しているため、本人が訴訟を行うことも不可能ではありません。
今回は、B型肝炎訴訟とはどんなもので、どのように訴訟の手続きをするのかについて解説します。
給付金を受け取るための要件
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスによって引き起こされるウイルス性肝炎です。
日本肝臓学会によれば、世界で約3億5,000万人が感染しており、日本でも約130~150万人の感染者がいるといわれています。
その多くは自然治癒しますが、肝炎が持続すると慢性肝炎となり、肝硬変や肝がんに発展する可能性もあります。
B型肝炎は、血液や体液などを介して感染します。
かつては子供への集団予防接種の際に、注射器が使い回されていたことで感染が広がってしまったこともありました。
これにより2006年に、注射器の交換などの適切な指導をしなかったとして、国の過失責任が認められました。
そして、2012年には『特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法』が施行され、感染者への給付金の支給がスタートしました。
この特措法の施行によって、要件を満たしていれば個人でも国に対して訴訟を起こし、給付金を受け取ることができます。
これが、B型肝炎訴訟です。
給付金を受けることができるのは、現在、B型肝炎に持続的に感染しており、集団予防接種時の注射器の連続使用によって感染したと認定された人(一次感染者)と、一次感染者から母子感染・父子感染した人(二次感染者)に限られます。
また、B型肝炎が持続感染化するのは、6歳ごろまでの免疫機能が未発達な幼少期に感染した場合のため、満7歳になるまでに集団予防接種を受けていることも要件の一つになります。
さらに、集団予防接種で注射器の連続使用が行われていたのは、昭和23年7月1日から、昭和63年1月27日までの期間とされており、この期間に集団予防接種を受けていたことも要件です。
支給を受けるために必要な証拠資料と流れ
では、実際に、自分がB型肝炎訴訟の救済対象であると判明した場合に、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。
B型肝炎訴訟の給付金を請求するには、証拠資料などを含む書類を集め、訴状を作成して裁判所に提出します。
裁判所に出廷し、和解が成立すれば、給付金支払請求書などを提出して給付金を受け取ることになります。
そのため、まずは要件を満たしていることを証明する証拠資料を集めなければいけません。
一次感染者は、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明する検査結果のほかに、一定の期間内に集団予防接種を受けたことを証明する母子手帳や予防接種台帳、集団予防接種等以外の感染原因がないことを証明するカルテ等の医療記録が必要になります。
二次感染者は、母親が一次感染者であることを証明する資料のほかに、母子感染であることを証明する証拠なども必要になります。
ほかにも、陳述書や通院歴に関する報告書などが必要な場合があるので、厚生労働省のホームページなどで確認しましょう。
証拠資料を揃えたら、裁判所に提出する訴状を作成します。
訴状の様式については裁判所のホームページで公開されているため、参考にするとよいでしょう。
そして、最寄りの地方裁判所に必要書類を提出します。
訴訟提起後には、裁判所から裁判の期日が指定されるので、その期日に合わせて出廷します。
ここで、訴状や証拠等の資料をもとに和解の要件を満たすかどうかの確認が行われ、確認できた場合は和解が成立となります。
もし、資料に不備不足がある場合は、追加で提出を求められることもあるので注意が必要です。
このように、給付金を受け取るまでにはさまざまな書類や手続きがあります。
必要な書類や資料もさまざまあるため、資料の不備不足も発生しやすいといえます。
また、裁判所が指定する日時に毎回、自らが出廷しなければいけません。
一方で、弁護士にB型肝炎訴訟を依頼した場合は、費用はかかりますが、書類の不足による減額などは回避できます。
困ったときには相談するのも一つの方法です。
厚生労働省では『B型肝炎訴訟の手引き』をホームページで公表しています。
手引きに沿って進めていけば、自分で提訴することも不可能ではありません。
自分が対象者かもしれないと少しでも思うのであれば、まずはB型肝炎訴訟について調べてみることが大切です。
※本記事の記載内容は、2022年2月現在の法令・情報等に基づいています。