企業活動の基盤として、自社の理念や方針を定めた『コーポレートアイデンティティ』があげられます。
アイデンティティとは、他者との差別化を可能にする『個性』であり、コーポレートアイデンティティは、いわばその企業版です。
他社との差別化や、自社のイメージ作りを可能にするもので、『マインド(理念)』『ビジュアル(視覚)』『ビヘイビア(行動)』の3つの要素から構成されています。
今回は、それを確立するまでのプロセスを具体的に紹介していきます。
なぜコーポレートアイデンティティが必要か
コーポレートアイデンティティを策定する目的は、企業の理念や方針を明確にすることです。
自社の文化やイメージについての共通認識が社内にないと、社員の足並みが揃わなかったり、振る舞いに一貫性がない、といった状況が生まれやすくなります。
だからこそ、企業活動には社員の指針となる企業理念や経営方針が必要不可欠で、それらを確立させる基礎になるコーポレートアイデンティティが重要なのです。
コーポレートアイデンティティの概念が誕生したのは、1950年代のアメリカでした。
モダンアートの隆盛と共に企業のロゴマークが注目を集め、そこからコーポレートアイデンティティという考え方が広まりました。
そのため、コーポレートアイデンティティといえばロゴマークのことだと理解する人も少なくありません。
しかし、あくまでコーポレートアイデンティティの一部に、ロゴマークなども存在するといった位置づけになります。
コーポレートアイデンティティは、マインドアイデンティティ(企業理念)、ビジュアルアイデンティティ(ロゴやコーポレートカラー、デザインなど、視覚に訴えるもの)、ビヘイビアアイデンティティ(社員の行動、企業としてのふるまい)、の3つの要素で構成されています。
自社のコーポレートアイデンティティを策定する場合は、マインドの要素から取り掛かるとよいでしょう。
マインド・ビジュアル・ビヘイビアの3要素
マインドアイデンティティとは、企業の存在意義、いわゆる『企業理念』がこれに当たります。
企業が果たすべき使命、企業の特徴、成就させたい目標、思い描いているビジョン、大切にしている志などが構成要素となります。まずはそれらを書き出してみるところから始めましょう。
この企業理念が定まっていないと、この後に続くビジュアルアイデンティティ、ビヘイビアアイデンティティも決めることができません。
ビジュアルアイデンティティは、企業理念を視覚化(ビジュアル化)したものを指します。
会社のシンボルマークや商品のロゴマーク、店舗のデザインのほかECサイトのユーザインタフェース、従業員のユニフォームやコーポレートカラーなど、視覚に訴えて表現するものの多くがこれに該当します。
ほとんどの大手企業は、名前を聞いただけで、企業のコーポレートカラーやロゴマークを思い浮かべられるのではないでしょうか。
コーポレートアイデンティティのなかでもビジュアルアイデンティティはもっとも外部にアピールしやすい領域で、企業イメージを形作る大切な要素になります。
また、ビヘイビアアイデンティティは、社員の行動を司るアイデンティティのことです。
企業理念(マインドアイデンティティ)を経営方針や事業活動に落とし込み、行動に移していくことで、ビヘイビアアイデンティティは育まれていきます。
マインドアイデンティティが社員行動にしっかり落とし込まれていると、取引先とのコミュニケーションや販売促進、組織改革や人事面など、企業のさまざまな場面において、自然と自社の理念に沿ったふるまいができるようになり、ビヘイビアアイデンティティが確立されていきます。
それでは、それぞれの作成手順について説明します。
ビジュアルアイデンティティもビヘイビアアイデンティティも、まずコーポレートアイデンティティの核となるマインドアイデンティティが存在して成立するものです。
経営者は自身の経営理念を言語化し、社内での話し合いなどを行って、マインドアイデンティティを完成させていきましょう。
マインドアイデンティティができあがったら、社員に周知を行い、浸透させることが大切です。
社員が理解に努め、納得感をもつことができれば自然と行動に反映していきます。
続いて、ビジュアルアイデンティティも作成していきましょう。
視覚的な要素はマーケティングにも関わってくるので、予算をしっかり組んでデザイン事務所に依頼することをおすすめします。
コーポレートアイデンティティを策定すると、企業経営に一貫性が生まれ、顧客や取引先から、より認知してもらえるといった効果があります。
“企業らしさ”そのものでもあるため、頻繁に変更するものではありません。
時を経てステークホルダーに浸透するにつれ、企業のブランド価値が高まり、他社との差別化にも一役買うようになります。
企業価値を高め、多くの人に愛される企業となるよう、まずはコーポレートアイデンティティの策定に取り組んでみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2022年6月現在の法令・情報等に基づいています。