『離婚』という選択肢が現実味を帯びてきたとき、何をすべきかご存じでしょうか。
離婚したいという気持ちが先に立ち、話し合いが不十分で、一方に不満の残る取り決めをしてしまうと、後のトラブルにつながることがあります。
ここでは離婚に際して夫婦間で話し合って決めておいたほうがよいことや、法的手続の種類、そのステップなどについて解説します。
夫婦の話し合いで合意できるなら協議離婚
夫婦間の話し合いで比較的すんなりと離婚の合意ができ、届出のみで成立する離婚を『協議離婚』といいます。
夫婦2人で離婚届を作成し、それを市区町村役場に届け出れば成立します。
ただし、協議離婚の形はとっていても、財産分与や年金分割、養育費等の詳細事項について取り決めをすることを忘れていたり、取り決めをしたとしても夫婦間の力関係に応じて一方に不利な内容の取り決めがされ、後に紛争が再燃するケースもあります。
夫と妻、双方が離婚の意思を持っていたとしても、以下のことは離婚前に話し合って取り決めておき、離婚協議書や公正証書を作成するほうがよいでしょう。
●財産分与(持ち家、貯蓄、車など)
●慰謝料(DVや浮気などの離婚原因があるとき)
●年金分割(厚生年金の分割割合)
●離婚後の生活費
子供がいる場合、上記4点に追加して、養育費をいつまで、いくら支払うか、発生する学費の負担をどのようにするかについて取り決めておくとよいでしょう。
また、子供が未成年の場合には、親権および面会交流の有無、頻度についても話し合いが必要です。
調停委員を交え話し合いで解決する調停離婚
一方、離婚に際しての取り決めの内容が複雑であったり、夫か妻のどちらかが離婚に反対している場合などには、『調停手続』を利用することも検討すべきです。
調停をしたい場合は、『夫婦関係調整調停(離婚)』を申し立てることができます。
これがいわゆる『調停離婚』です。
調停とは、原則として2名の調停委員と1名の裁判官から構成される調停委員会を仲介役に、夫婦双方の合意形成を目指す手続きです。
調停段階で合意に至った場合には、その合意内容は調停調書の形で残され、確定判決と同様の効力が生じます。
また、協議段階で合意に至らなかったため、訴訟の提起をしようと思い立っても、すぐには訴訟の提起はできず、この調停の手続きを経なければなりません(調停前置主義)。
調停手続きは、離婚において使用頻度の高い手続きといえます。
ただし、先ほども述べたとおり、調停手続きはあくまで話し合いでの解決を目指すものであるため、当事者双方が出頭しない限り話が進みません。
また、調停期日間のスパンも1~2カ月程度と長く、時間と根気を必要とする場合が多くなります。
裁判所により強制的に解決する離婚訴訟
調停は、あくまで話し合いの手続きであり、合意に至らないこともあります。
その場合には、家庭裁判所に『離婚訴訟』を提起することとなります。
離婚訴訟では、第三者である裁判所が、夫婦双方の主張とそれを裏づける証拠をもとに、判決という形で結論を出します。
離婚を認める判決が確定すると、その時点で、婚姻関係は将来に向かって解消することとなります。
このように、訴訟は紛争解決能力の高い手続きです。
ただし、訴訟手続では、書面の作成と証拠の提出が求められ、少なからず法的知識を要します。
本人だけで行うには難易度が高く、また、柔軟な解決を得づらい側面があるのもデメリットです。
以上のように、離婚に向けた手続きは、協議、調停、裁判の順で進行します。
手続きについて理解しておくことで、万が一のときに不利な状況に陥るのを避けられる可能性が高まります。
不安を感じた時点で、一度、専門家に相談してみるのも方法の一つです。
※本記事の記載内容は、2022年10月現在の法令・情報等に基づいています。