h1. ご挨拶
皆様、こんにちは!税理士法人タクト職員の蘇力徳です。秋の気配を色濃く感じられる頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?体調を崩されませんようくれぐれもご自愛ください。
h2. 背景
今回のコラムは「中小企業向け賃上げ促進税制」についてです。今年4月1日以降開始する各事業年度の「賃上げ促進税制」が強化されましたので、ご紹介します。
「中小企業向け賃上げ促進税制」は令和4年度税制改正で創設され、中小企業者等又は青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主が、前年度より給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一部を法人税あるいは所得税から税額控除できる制度です。
今回ご紹介する税制改正の減税適用期間は令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度です。税額控除の上限額が法人税額又は所得税額の20%は変わらないですが、税額控除の【必須要件】と【上乗せ要件①】の他に、【上乗せ要件②】が新設されました。以下ご覧ください。
h3.【必須要件】
② 雇用者給与等支給額が前年度と比べて5%以上増加している場合、控除対象雇用者給与等支給増加額の30%を法人税額又は所得税額から控除。
h4.【上乗せ要件①】
教育訓練費の額が前年度と比べて5%以上(改正前10%以上)増加している、かつ適用事業年度の教育訓練費の額が適用事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合、税額控除率を10%上乗せ税額控除。
h5.【上乗せ要件②】(新設)
適用事業年度中にくるみん認定、くるみんプラス認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を取得したこと、又は適用事業年度終了の時において、プラチナくるみん認定、プラチナくるみんプラス認定若しくはプラチナえるぼし認定を取得している場合、税額控除率を5%上乗せ税額控除。
くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて、下記URLご参考ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html
えるぼし認定・プラチナえるぼし認定について下記URLご参考ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
h6. さらに、今回の改正の中での大きな改正ポイントは、中小企業者等又は青色申告書を提出する常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主が、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額の5年間の繰越しが可能の「繰越控除措置」が新設されたことです。
繰越控除措置のイメージを以下の図をご覧ください。
この「賃上げ促進税制」は、企業が積極的に賃上げを行うことを促進し、労働者の所得向上と経済の活性化を図ることを目的とし、政府が創設した税額控除制度です。以前給与増額後控除しきれなかった金額がそのまま消失してしまうというデメリットがありましたが、今回の税制改正で控除しきれなかった金額が5年間繰越し可能の「繰越控除措置」が新設されたことで、だいぶ使いやすくなったと言えます。
また、未控除額を翌年度以降に繰り越す場合は、未控除額が発生した年度の申告において、「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を提出する必要がありますので、申告年度が赤字の場合でも要件を満たしているかの確認と別表の添付を忘れないようにしましょう。
いかがだったでしょうか?もし何かご不明点ございましたら、税理士法人タクトまでお問い合わせください。
h7. 用語の説明
(中小企業者等)
青色申告書を提出する者のうち、以下に該当するものを指します。
(1)以下のいずれかに該当する法人(ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は本税制適用の対象外)
①資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人ただし、以下の法人は対象外
・同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円超の法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の1以上の出資を受ける法人
・2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受ける法人②資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
(2)協同組合等(中小企業等協同組合、出資組合である商工組合等※)
※協同組合等に含まれる組合は、農業協同組合、農業協同組合連合会、中小企業等協同組合、出資組合である商工組合及び商工組合連合会、内航海運組合、内航海運組合連合会、出資組合である生活衛生同業組合、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、森林組合並びに森林組合連合会です。
(給与等)
俸給・給料・賃金・歳費及び賞与並びに、これらの性質を有する給与(所得税法第28条第1項に規定する給与等)をいいます。退職金など、給与所得とならないものについては、原則として給与等に該当しません。ただし、本制度の適用に当たって、賃金台帳に記載された支給額(所得税法上課税されない通勤手当等の額を含む。)のみを計算する等、合理的な方法により継続して給与等支給額を計算することも認められます。
(雇用者給与等支給額)
適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額をいいます。ただし、「補塡額」(給与等に充てるため他の者(その法人が外国法人である場合の法人税法第138条第1項第1号に規定する本店等を含みます。)から支払を受ける金額から「雇用安定助成金額(国又は地方公共団体から受ける雇用保険法第62条第1項第1号に掲げる事業として支給が行われる助成金その他これに類するものの額)」及び「役務の提供の対価として支払を受ける金額」を除いた額をいいます。)がある場合には、給与等の支給額から控除します。
(比較雇用者給与等支給額)
適用事業年度の前事業年度における雇用者給与等支給額をいいます。
(控除対象雇用者給与等支給増加額)
「雇用者給与等支給額」から「比較雇用者給与等支給額」を控除した金額をいいます。ただし、調整雇用者給与等支給増加額を上限とします。
h8. 参考文献:
- 国税庁5927-2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5927-2.htm
- 中小企業庁 中小企業向け「賃上げ促進税制」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html