不動産の所有者が亡くなって相続が発生したときには、亡くなった人から相続人に不動産の所有者が変わります。
それに伴い、相続登記をして不動産の所有者を変更しなければなりません。
相続登記にはいろいろな種類があり、権利変更の内容によって、登記の種類が異なります。
今回は、相続登記の種類やそれぞれの登記手続きに必要な書類について説明します。
まずは基本的な必要書類を確認しよう
不動産登記の目的は、土地・建物の権利関係をはっきりさせると同時に、公的な裏付けを得ることです。
不動産は売買されたり、相続や贈与によって譲渡されたりしますが、そのときに所有者が分かっていないと思わぬトラブルになることがあるからです。
相続が起きたときには、登記簿上に記載されている所有者名義を変更する手続きが必要です。
相続登記をする際の基本的な必要書類は、次のとおりです。
以下、これらをまとめて相続関係証明書と呼びます。
《被相続人関係》
●被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
●被相続人の本籍入りの住民票除票
●登記事項証明書(登記簿謄本)
●固定資産評価証明書
《相続人関係》
●相続する人全員分の戸籍謄本
●相続する人のうち、不動産を取得する相続人全員分の住民票
●相続する人全員分の印鑑証明
なお、登記の種類によっては、相続関係証明書の一部だけが必要となる場合がありますが、割愛します。
このほか、相続関係証明書のほかに別の書類が必要となる場合があるので、それぞれの登記の特徴と必要書類について、見ていきましょう。
登記のパターンは、大きく4つに分けられる
(1)法定相続による相続登記
相続が発生したときに、誰が相続人になるのかは民法によって定められています。
これを法定相続といい、法定相続通りに相続する場合、不動産は全相続人の共有となります。
本来は相続人全員で申請する必要がありますが、ほかの相続人の協力が得られない場合には、法定相続人のうちの一人だけが申請人となることも可能です。
【必要書類】
●相続関係証明書
(2)遺産分割による相続登記
法定相続通りに遺産を分けるのではなく、相続人が話し合うことによって相続財産の分配を変えることもできます。
たとえば、自宅を長男が相続して、預貯金などそれ以外の相続財産を被相続人の妻が相続するなどです。
相続登記をしたのち遺産分割協議が成立した場合、遺産分割による所有権移転登記を行います。
【必要書類】
●相続関係証明書
●遺産分割協議書および相続人全員の印鑑証明書
(3)遺言書による相続登記
被相続人が生前、遺言書を作成していれば、基本的に遺言書に書かれているとおりに遺産を分割します。
ただ、遺言書があったとしても、全ての相続人が、遺言書とは違う分配にすることに合意したときには、分配を変えることができます。
その場合は新たに遺産分割協議書を作ることになりますので、必要書類も遺産分割による相続登記に準じます。
【必要書類】
●相続関係証明書
●遺言書(自筆または秘密証書遺言による場合は検認が完了したもの)
(4)死因贈与による登記
死因贈与とは、被相続人が生前に「自分が死んだら、○○に財産を贈与する」と定めておくことです。
贈与なので、相続人以外の人にも不動産を譲渡することができます。
遺贈は遺言者が一方的に行う意思表示であるのに対して、死因贈与は、贈与者と受贈者の意思表示の合致によって成立します。
死因贈与による所有権移転登記をする場合、相続登記とは異なり、共同申請による登記申請手続きを経る必要があります。
【必要書類】
●死因贈与契約書
●受贈者の住民票
●相続関係証明書
●権利証(登記識別情報)
●印鑑証明書
以上が、各登記の大まかな概要と必要書類です。
ちなみに相続登記を行うときには、登録免許税が必要です。
一般的に相続人が不動産を取得するときには、登録免許税は評価額の0.4%ですが、死因贈与だけは評価額の2%の登録免許税がかかるので、この点は注意が必要です。
相続登記の種類によって必要な書類や費用も変わってきます。
事前に手続きの内容をしっかり確認しておきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。