社内提案制度とは、経営者が会社の労働環境改善や業務改善などについて、従業員から広くアイデアや意見を募集する制度です。
募集したアイデアのなかから優れたものを運用することで、社員のモチベーションや生産性をアップさせ、会社の業績を上げることにもつながります。
今回は、うまく活用できれば会社の大きな力となる、社内提案制度の導入方法について紹介します。
社内提案制度を導入する前に
労働環境の改善や向上が、各企業のなかで進みつつあります。
なかでも、働き手である従業員から改善案を募集する、社内提案制度の導入に注目が集まっています。
提案として募集する内容は、会社の業態や目的によってさまざまです。
たとえば労働環境の改善を目的とするのであれば、『就業ルールの改善点』『オフィスの改善点』などに改善すべきポイントを絞って募集をかけましょう。
ほかにも、『新商品のアイデア』や『顧客対応の改善点』『経費削減のアイデア』などのテーマについて、従業員の意見を募集することで、売上の拡大や業績の向上などにつなげることができます。
労働環境の改善点を従業員から募集する場合には、正社員だけではなくパートやアルバイトからも募集するようにしましょう。
さまざまな立場からの意見を聞いたほうが、より現場にとって有用な施策になる可能性があるからです。
また、こうした制度はせっかく導入しても形骸化してしまうケースが多くあります。
従業員から提案が寄せられないことも想定できるため、経営陣が積極的に呼び掛けなければ、なかなか軌道に乗せることができません。
どんな小さな提案も無視せずに、提案をしてくれたこと自体を評価しながら進めることが大切です。
社内改革において、従業員が主体となって参加する場合は、取り組みは『自分ごと』となります。
従業員が社内改革に積極的に関与できるよう促す意味でも、社内提案制度の導入は効果的なのです。
自分たちのことだから積極的になれる
社内提案制度は、社員のモチベーションをアップし、生産性も上げることが最終目的です。
労働環境の改善においては、経営者側から指示されるのと、従業員がアイデアを出して実行するのとでは、意味が違います。
社内提案で施策が決まれば、『いわれたからやろう』ではなく、『自分たちから出た提案だからやろう』と思えるものです。
たとえば、『ノー残業デー』も、従業員からの意見が通ったものであれば、所定時間内に集中して業務を終わらせ、残業をしないようにするとモチベーションが上がります。
社内の清掃が輪番制になった場合も、『平等にするよういわれたから』ではなく、『一部に負担が偏っているという声があったから』という理由の方が、説得力があるはずです。
実際に社内提案制度を導入するには、いつまでに何件ぐらいの意見がほしいのか、どのような内容を募集しているかを、具体的に従業員に周知する必要があります。
最初は1~2カ月ほど期間を区切って募集し、従業員の反応を見ながら、微調整していくとよいでしょう。
従業員のなかから制度の担当者を決めても構いませんが、担当者に負担が集中してしまう可能性もあるため、最初は経営者自身が運用を担当することをお勧めします。
期間を決めたら、導入の目的を明確にし、『どのような提案を募集するのか』を考えていきましょう。
また、提案を受け付ける方法にも工夫が必要です。
オフィスに目安箱を設置する方法もありますが、簡単なのは、提案専用のメールアドレスを設けることです。
さらに、従業員が記入する内容を整理できるように、提案を記入するためのフォーマットも用意すると、なおよいかもしれません。
制度が始まったあとに心掛けること
募集した後のリアクションは何よりも重要です。
制度を周知して提案が集まり始めたら、なるべく早く件数と内容を確認し、評価後に実行するかしないかを含めて公表しましょう。
ここで大事なのはスピードです。
せっかく提案したのに、いつまで経ってもその後のリアクションがないままだと、従業員は経営者に対して熱意を感じなくなってしまい、社内提案制度自体を利用しなくなってしまいます。
提案を実施しないなら、『なぜ提案を採用しなかったのか』について説明するくらいでも、やりすぎではありません。
また、よいアイデアを出した従業員を表彰したり、アイデア1件ごとに手当を支給したりするのも、次のアイデアを求めるにあたっては、効果的です。
社内提案制度は、従業員からの提案がすべてです。
まずは経営者側が工夫をこらし、従業員が提案したくなるような制度にしていきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年10月現在の法令・情報等に基づいています。