多くの職場には積極的に働く人がいる一方で、そうではない人もなかにはいます。
たとえば、周囲に働いていないと思われている中高年従業員を指す『働かないおじさん』という言葉まで存在します。
だからといって、そのような従業員を容易に辞めさせるわけにはいきません。
しかし、その影響で、やる気のある若手従業員が会社を去って行くことは避けたいものです。
そのようななか、事態を解消するべく、インセンティブ報酬を採用する会社が増えています。
今回はインセンティブ報酬とはどのような制度なのか解説します。
インセンティブ報酬とはなにか?
インセンティブ報酬とは、従業員のモチベーションアップを目的として、業績や成果に連動して変動する報酬のことを指します。
報酬の中身としては、さまざまなものが考えられます。
ストック・オプション等、株式を付与して、会社全体の業績向上や株価の上昇を目指すべく職務に励んでもらうことを期待する場合もありますし、従業員の目標達成度合いに応じた成果報酬として毎月の給与とは別に金銭を交付する場合もあります。
また、人前で表彰したり、業績に応じて社内ポイントを付与したり、旅行をプレゼントしたりといった金銭以外のものであっても、モチベーションアップにつながるものであれば、インセンティブ報酬といえます。
目標を達成したチームの飲み代は企業が負担する、という形でのインセンティブ報酬を取り入れている会社もあるようです。
賞与、歩合給とインセンティブ報酬
賞与も、従業員のモチベーションアップを目的として、毎月の給与とは別に金銭を交付するものであり、インセンティブ報酬の一種と考えることができます。
ただし、個人の業績に連動するインセンティブというより、会社全体の業績に応じて全従業員を対象に支給されるのが一般的です。
この点においては、会社の業績向上に応じて含み益も向上するストック・オプション等の位置づけに似ているかもしれません。
もちろん、企業によっては、賞与の額を個人の業績に応じて変動させる仕組みを取り入れているところもあり、運用方法は企業によってさまざまだといえます。
歩合給は、個人の売上に対してあらかじめ定められた歩合率を乗じて算出した金額を支給するもので、仕事の成果に応じて賃金の額が決定されます。
このように仕事の成果に応じて賃金の額を決定する制度を出来高払制といいます。
出来高払制は、保険外交員やタクシー運転手などによく採用されています。
ただし、労働法27条では、『出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない』と定めています。
したがって、出来高払制だとしても、従業員に対して歩合給のみの支給は認められていません。
一定の固定給の支払を保証したうえで、プラスアルファとして歩合給を支給する必要があります。
歩合給も、個人の業績に応じて支給額が変動する点で、インセンティブ報酬の一種と考えることができます。
注意すべき点としては、いわゆるインセンティブ報酬が一定期間における成果や業績に対して支給されることが多いのに対し、歩合給は1件ごとの仕事に対して支払われるという点です。
インセンティブ報酬のメリット・デメリット
インセンティブ報酬は、個人のモチベーションアップを目的とするものであり、従業員のモチベーションが上がることが期待されます。
また、インセンティブ報酬の基準を明確に示すことで、評価基準が明確化されるとともに従業員の目指すべき目標も明確化されるといえます。
一方で、個人の業績アップのみを目的にしてしまうと、チームメンバーと協力したり重要な情報を共有することをしなくなり、チームワークが悪化する恐れがあります。
インセンティブ報酬を導入する際には、こうしたメリット・デメリットを踏まえ、個人とチームをどのように評価するのか、慎重に検討することが求められます。
※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。