中小企業の経営者の高齢化に伴い、事業承継問題が顕著化しています。
跡を継いでくれる家族や従業員など後継者になってくれる人材がいないために、頭を悩ませている経営者は少なくありません。
そこで国は、事業承継を支援する目的で、全国47都道府県に『事業引継ぎ支援センター』を設置し、事業引継ぎのためのサポートを行っています。
今回は、その概要や利用方法などをご紹介します。
『事業引継ぎ支援センター』とは
『事業引継ぎ支援センター』は、国が2011年度から全国47都道府県に設置した施設で、後継者不足に悩む中小企業の経営者や小規模事業者に対して、第三者への承継を支援する活動を行っています。
中小企業庁が2016年に行った『小規模事業者の事業活動の実態把握調査』によると、「承継したいが現時点後継者候補が見つからない」「承継したいが承継できない(収入・生活面での不安など)」と回答した経営者は合計で8.1%おり、円滑な事業承継に支障を来たしている経営者が一定数いることがわかりました。
こうした経営者への支援が望まれている一方、事業引継ぎ支援センターの存在を「知っている」あるいは「聞いたことがある」経営者は22.9%にとどまり、77.1%もの人がその存在を「知らない」と答えました。
事業引継ぎ支援センターが設置された目的は、後継者不足による廃業件数を減らすことにあります。
事業承継を望みながらも、後継者のいない経営者は、一度相談してみることをおすすめします。
事業引継ぎ支援センターでは、事業引継ぎ等に関するさまざまな情報提供や、助言などを行っており、後継者不足に悩む経営者の力になってくれます。
対応するのは、中小企業のM&A仲介業務の実務経験を積んだ専門家で、譲渡先探しから譲渡契約成約までのサポートが受けられます。
事業引継ぎ支援センターは国が各都道府県に設置している施設なので、M&Aや事業承継に関わる事柄を無料で相談でき、また、秘密厳守も徹底されています。
相談は、各センターのホームページのメールフォームや電話で予約を行い、直接センターに足を運ぶことになります。
また、上記のような相談窓口業務以外にも、M&Aについてのセミナーなどを実施しているほか、2014年からは、東京都を筆頭に全国11カ所のセンターで、跡継ぎのいない経営者と起業家とのマッチングを目的とした『後継者人材バンク』の事業をスタートさせています。
この事業は、今後はほかのセンターでも取り扱うようになる予定です。
『後継者人材バンク』の利用方法
事業引継ぎ支援センターの事業の一環として行われている『後継者人材バンク』とは、跡継ぎを探している中小企業の経営者と、事業を引き継ぎたい企業もしくは個人起業家を結びつけるマッチング事業です。
跡継ぎを探している中小企業の経営者は、まず、センターでの専門家との相談を経て、後継者人材バンクを利用する旨を伝え、必要事項を記入するなどして申し込みを行います。
面接を行う前に申し込むこともできますが、どちらにせよ後日センターの専門家と面接を行うことになります。
面接では、こちらの要望をもとに、後継者人材バンクへの登録を行っていきます。
登録では、事業を承継する側に見てもらうためのシートを作成します。
事業の内容など、事業を承継する側にとっては重要な検討材料となるものなので、しっかりと記入しましょう。
また、シートは匿名にすることも可能なので、この段階で事業を承継する側に会社が特定されることはありません。
こうして登録が終わったら、あとは情報を配信し、登録者からの応募を待ちます。
自社に関心を持つ登録者が現れたら、詳細資料を開示して、双方による面談を開催。
お互いに希望条件を提示して、センターの仲介によって交渉を行い、折り合いがついた場合は、晴れて合意となります。
合意となったら、事業承継の手続きを進め、最終的には契約を締結させます。
後継者人材バンクは、事業引継ぎ支援センターが実施する事業なので、手数料もかからず、安心して利用することができます。
また、専門家によるサポートもあり、条件の合う後継者を探せる可能性も高いといえるでしょう。
まだまだセンターの認知度は低いですが、中小機構が2020年に公表したセンターの2019年度の事業引継ぎ成約件数は、前年度比27.4%増の1,176件と、増加傾向にあります。
後継者不足に悩む事業者は、事業引継ぎ支援センターの利用を考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。
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